祖母からのラシャ切り鋏
祖母のはさみを受け継いだ母親から返さなくていいけど貸してくれるということでラシャ切り鋏を借りました。
前々から欲しかった生地を裁断する鋏。鋏自体の重みと刃ですーっと生地を裁断できるものです。
鋏を見て自分が小さい頃に母親が使っているのを思い出しました。小さな自分にはとても重たく恐ろしい鋏でした。
鋏は祖母が東京神田のネクタイ問屋(現 成和ネクタイ)を退職するときに記念で会社で使っていたものをもらったものだそうです。祖母は自分が生まれる少し前に他界しています。生まれ変わりのようなので自分の名前は祖母から一文字『喜』をもらっています。なのでかなりかなり古い鋏です。
見ると与三郎作。ちょっと検索。
与三郎
裁ち鋏の始祖「弥吉」の四高弟の一人。初代、二代共に秋葉原 研綱に納品する。表に登録商標 八弁の菊 与三郎作裏側に研綱が刻まれている。
初代は明治~昭和10年代頃まで製作、二代目/昭和10年代から30年代頃まで製作。
鋏はしばらくしまってあった物を今回とぎ屋さんにといでもらい切れ味を戻してもらいました。重みもしっかりした作りも握りもなんかこうジンと来ます。ちょっとだけ調べて思いましたが鋏職人の江戸の歴史すごいんですね。しかもこの鋏もかなりちゃんとしたもののようです。
自分には一代目か二代目のものかなんて分からないんですがすくなくとも50~60年前のものです。祖母の手に渡るまでにどのように人の手を渡ってきたかは分かりませんが自分に渡りすくなくとも親子3代にわたったわけです。
このように親から子にバトンされていくようなものってなくなってしまっていますね。時代を越えて長い月日を経過しても高い機能と性能を損なわず伝わっていく、本物ですね。大切に大切にそしてばんばん使います。
自分の子供達もだれかこういった仕事をやるのか、やらなくても裁縫が好きならバトンしたいなとも思います。買い換えるのではなく手を加えてメンテして愛情と愛着を持って使っていく。道具の本質って気がします。
このラシャ切り鋏にみならって自分も物をつくるって本質とか気持ちを考えたいと思います。親から子にってものをつくれたら素晴らしいですね。